私の家系では、毎年1回祖父の郷里、岡山県に親戚一同が集まります。その場は、命をつないでくれたご先祖様に、深い感謝を伝えるとともに今後の精進を誓う場であると父に教わりました。この話を聞いて、命のつながりについて考えた私は、ふと東京の靖國神社を訪れたときのことを思い出しました。
靖國神社には、江戸時代の終わり以降、国家のために殉難した人の霊が祀られています。神社の境内にある遊就館には、近代日本の戦争について説明された映像やパネル、実際に使用された道具などが展示されていました。その中で私が最も衝撃を受けたのは、特攻隊員の方が家族にあてて書いた遺書です。まだ産まれていない子供の成長を願うもの、自分を産み育ててくれた母へ感謝を伝えるものなど様々なものがあり、涙なしには読むことができませんでした。どれだけの人が私たちの国、日本に誇りを持ち、愛する人を守ろうとして戦地へ向かったのでしょう。連合国との圧倒的な物量の差があった中で戦った私たちの祖先。命のつながりが途絶えてもおかしくない中で、私たちにまで命はつながってきたのだと。
日本という国をつないできた人たちもいます。歴代の天皇がそれにあたります。天皇の一番大切なお務めは宮中祭祀であると道徳の授業で教わりました。宮中祭祀とは、天照大神をはじめとするあまたの神々をお祭りし、国の平和と国民の幸福を祈ることです。祖先である歴代天皇の霊にも感謝の祈りを捧げておられます。2000年以上も昔の初代・神武天皇から126代の令和の天皇陛下まで一貫してつないでこられた「祈り」がそこにはあります。
廣池千九郎先生は、これらのつながりには「宇宙自然のはたらき」があると教えてくださいました。私たちは宇宙自然のはたらきによって生かされている存在で、言い換えれば私自身も宇宙自然の一部なのです。これらのつながりに気づき、感謝して、恩返しすることが宇宙自然のはたらきにかなうことであると分かりました。
私たちを生かしてくれている存在の一つは、国家です。現在も様々な紛争が起こっている国もありますが、私たちは安定した秩序ある国に暮らすことができています。二つ目は祖先です。遠い昔の先祖からの長い営みの先に私たちの命がつながっているということは奇跡であると言えます。
私たちの使命は、私たちが生かされている存在であることを理解すること、そして生かされていることに感謝することだと思います。そして私にできる恩返しは、日々健康に過ごし、未来へ命をつなげていくことだと考えるようになりました。