2014/8/15

「レジリエンス」を高めよう

校長 蟹井克也

 レジリエンスという言葉は「復元力、回復力、弾力」などと訳される物理学の言葉ですが、近年は特に「困難な状況下でも、しなやかに適応して生き延びていく力」という意味で使われるようになってきました。
 厚生労働省などの発表によると、働く人の精神障害による労災申請件数は年々増加していますし、自殺者数は毎年3万人を割り込むようにはなってきましたが、20代から30代の若者の自殺率は高いままです。ストレスや多忙によって精神が疲労し、うつ病を発症する人が増え社会問題にもなっています。若い人たちは、学校で一所懸命に勉強をして、目標とした高校や大学に入学を果たしたとしても、今度は就職活動で試練を迎えます。大学3年生から4年生になる頃に、希望をする会社にエントリーをして就職活動をする学生が多いのですが、望んだ会社に苦労なく就職が出来る学生は一握りに過ぎないでしょうし、高校卒業後に社会に出る生徒たちも、自分の思い描いた道に進めず希望を失うことも多いと思います。また、あの東日本大震災などに象徴されるように、自分の力、人間の力では到底及ばない大自然の驚異に遭遇して生きる意欲を喪失することもあるでしょう。こんな時代に、どんな状況下であっても強くそして柔軟に対応し「心を折る」ことなく生き抜いていく力、レジリエンスを備えることが、いま求められているのです。

 では、このような力、レジリエンスはどうしたら高められるのでしょうか。国内外の研究者によれば、レジリエンスを高めるためには、個人がありのままの自分を受け入れ、自分の良さに気づいて自信を持つこと、すなわち自尊感情を持つことが大切であるということです。また、失敗しても再び挑戦しようとするポジティブシンキングを身につけることの重要性や、自分は孤独ではなくて、「自分を助けてくれる信頼できる人がいる」と感じられることもレジリエンスを高めるために有効であると言われています。自分を認め、頑張る勇気を持ち、周囲とつながっているという安心感を持つことができれば、レジリエンスを高められるというわけです。若い人たちに対して、私自身は特に自尊感情を上手に育ててあげることの必要性を感じています。自尊感情といっても、自分が他人より優越しているというような、自分と他人との比較ではなく、「生まれてきて良かった」「自分には価値がある」「自分は自分」と思える感情が育っていくように周囲の大人(親や教職員)が心がけることが大切でしょう。

 その方法は様々で、何といっても家庭で無償の愛情を注ぐのが一番と言われますが、学校においても、学校生活のあらゆる場面で児童・生徒の良さを見つけてあげたり、努力を評価したり役割や責任を持たせる機会を準備してあげる。お互いに挨拶の出来る環境づくりに努めて、人と人との温もりや連帯感を実感させ、人は支え合って生きていることを感じさせたり、他人の行為に感謝することの大切さを教えたりすることも自尊感情を育てる手立てとなるでしょう。
 人生は失敗の連続ですが、倒れても挫けても、また立ち直っていける強くて柔軟な心を養いたいものです。

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